支援者の声
「ずっと続けられるような活動を」
社会人ボランティアとして何度もお手伝いいただいている黒田満さん。普段は建築の構造設計の仕事をしていらっしゃいます。レスパイト旅行に初めて参加されてから度々はねやすめの活動に参加していただいています。学生ボランティアの古川夏生がお話を伺いました。ご自身の経験と、若い世代への期待、そしてこれからの活動への期待をお話しいただきました。
「 出会いは新聞記事でした。」
普段のお仕事とは関わりがない親子はねやすめの活動をどのようにお知りになったのか伺いました。
「出会いは4~5年前に読んだ新聞記事です。 “レスパイト(=ひと休み)” という言葉を初めて知り、障がいを持った方とそのご家族がちょっと休憩、ひと休みできるという活動に、世の中には素晴らしい活動をしている方がいるんだと心を惹かれました。また“親子はねやすめ”という名前は、ぴったりなネーミングだなぁとその名前が強く印象に残りました。」
「 家族そろって出かけることの大切さに共感するものがあるから」
ご自身の経験もあって親子はねやすめに興味をもってくださったという黒田さん。大変デリケートな話ということで言葉に詰まりながらも、ご自身の経験をお話くださいました。
「私には障がいを抱えた2つ上の姉がいました。残念ながら姉は私が高校生の時に他界しました。私もその意味ではきょうだい児なんですね。だから、きょうだい児の気持ちはなんとなくわかるような気がします。
今は障がいのある方が外に出る機会も増えてきたと思うのですが、昔は世の中の雰囲気としてあまり外に出られず、まして家族で旅行になんて行けませんでした。姉の世話で手を離せない親の代わりに、親しい親戚が私や弟たちを外に連れ出してくれましたが、まわりには家族連れも多く、子ども心に寂しいと感じたことを覚えています。だから家族みんなで出かける機会があるというのは大事なことだと思います。」
この話は今まで周囲にあまり話されたことがないといいます。その理由をうかがうと、
「今は、障がいを抱える方の環境について、少しずつ理解は進んできていると思います。でもまだまだデリケートな話であることに変わりはない。私もつい最近まで話せませんでした。それくらい重く、背負ってしまうもの。元きょうだい児でもそうなんですから、その子の両親の思いは想像できないくらいだと思います。」と話してくださいました。
それでもなおインタビューに答えてくださった黒田さん。若い世代への期待を語ってくださいました。
「若い人たちが“ふつう”に接していることが素晴らしいです」
「新聞記事を読んで4~5年が経ち、子どもたちが大学生になり、すこし落ち着いたので、やってみようと改めて決意しました。これも何かの縁だなと思って。50歳を過ぎて初めてのボランティアですよ。最初は緊張して、どんなことができるか分からず不安がありましたが、代表の宮地さんたちに『ご家族のそばに寄り添って下さるだけで結構ですからぜひご参加ください』と気さくにおっしゃっていただき、気持ちが楽になりました。
実際に参加してみて素晴らしいと感じたことは、若い方たちが大勢参加していることです。重い障がいを抱えた子どもやそのご家族と接することは難しいと思います。一歩引いちゃうだろうし、どう接したらいいか分からないこともあると思うけど、それでも若い方たちが積極的に参加している姿を見ると、世の中捨てたもんじゃないなと素直に思いました。本当は、ボランティアを募らなくても周囲の人が障がいを抱えた人たちに自然と手を差し伸べられる社会になったらいいなと思います。私も身近な人に知ってほしいと思い、妻や長男も誘って参加しています。」
「全力で生きる人たちから力をもらっているのかもしれない」
「数年前に父が他界したのですが、身近で大切な人との別れに直面すると、生きることやその意味みたいなものを考えてしまいますね。ふりかえってみると、姉は話すことはできなくても、笑ったり怒ったり泣いたりと、喜怒哀楽の自己表現をめいっぱいして、家族と十分理解しあえていました。一日一日を精いっぱい全力で生きていたんだなぁと。全力で生きるのは素晴らしいことで、大事なことだと改めて気づかされました。姉のおかげですごく濃密な家族の時間を過ごすことができました。ちょっとかっこよく言えば家族の絆が深まっていくんだと思います。当時は家族全員が毎日必死でしたから、そう思う余裕もありませんでしたが、十分に時間が経った今の心境として、素直にそう思えるようになりました。姉には感謝してもしきれないですね。
レスパイト旅行のとき、ゲストさんやご家族の表情、とりわけ笑顔がすごく印象的でした。親子はねやすめの活動において周りでサポートしている方々も、実はゲストさんやご家族から生きる力のようなものをもらい、生きることの大切さを教わっているんじゃないかとも思っています。」
「とにかく活動を続けていってほしい」
最後にこれからの親子はねやすめに求めることを伺いました。
「とにかく活動を続けていってほしいですね。若い方々の参加もどんどん増えて輪が広がり、さらに活動を大きくしてほしいです。家族そろって自然の中で美味しい空気を吸って、そこにいるだけで落ちるけるような環境で、美味しいものを食べたり、普段経験できない遊びをしたりする、そういう経験をこれからもたくさんしてほしいですね。私は機会が許す限りこれからも活動に参加させてもらいたいと思っています。」
インタビューをさせていただいて(編集後記)
私は心理学部に所属していることもあり、障がいを持っている方へのマイナスな感情があまりありませんでした。しかし、今回お話をうかがって、障がいをお持ちの方、そのご家族は、私が思っていた以上に世間からの冷たい風を受けていることが分かりました。そうしたご家族を支援する親子はねやすめの活動は改めて大切なものだと感じ、さらに広まっていってほしいなと思いました。今回お話を聞けたことは、私にとっても非常に貴重な経験でした。(古川夏生)